Gold Man
セーラがその子どもに駆け寄り、その場に跪いて手を差しのようとする。優しいセーラだから迷わずにそうしているのだ。しかし、カイルの心にモヤッとした感情が走った。

(せっかく買ったドレスが汚れてしまう……)

その思いから、カイルはセーラが跪く前にその腕を引いて止めた。

「セーラ、行くよ」

「で、でも……」

「行くよ!」

低い声でカイルが言うと、セーラは子どもの方を申し訳なさそうに何度も見つめながら離れる。カイルはドレスが汚されなかったことにホッとし、その顔に笑顔が戻った。

それから数ヶ月後、二人は豪華な結婚式を挙げ、新婚旅行に行き、夫婦になった。



豪邸で暮らすようになってから、カイルの頭は次第にお金のことしか浮かばなくなってしまった。いつも、金庫としてお金を入れてある部屋に行き、そこに山のように積まれたお金と金のなる木を見て過ごす。

「カイル、また今日も部屋に籠もるの?」

セーラが訊ね、カイルは「ああ」と頷く。新婚旅行以来、カイルはほとんど屋敷から出ることもなく暮らしていた。
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