周王 龍巳を怒らせるな
消してあげるよ
「穂ちゃん、何があったの?」
「仕事で嫌な事があっただけだよ」
「そっか」
「今、たっちゃんにギュッてしてもらったから、大丈夫だよ!」
ニコッと笑って、穂華が言う。

「………ほんとは、何?」
「え?」
「明らかにおかしい。穂ちゃんが甘えてくれるの嬉しいけど、何か辛いことがあったとしか思えない!」
「………何、も…」
「穂華!」
「え?」
「言ってよ!
それとも、無理やり言わせようか?」
龍巳の恐ろしい雰囲気に、穂華は全て話したのだった。
「………そう…」
龍巳は静かに答えると、穂華を抱き締めた。

「怖かったね。もう大丈夫だからね!
僕が…消してあげるよ……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
仕事が終わり、マンションに帰ると岸元がいた。
「おかえりなさい。穂華さん」
「あ、岸元さん。
ただいま帰りました」
「今日はキング、帰りが遅くなるそうです。
先に休んでいるように言われてました」
「あ、はい。わかりました。
…………あの、まさか…一式さんに何かしに行ったとかじゃないですよね?」
「申し訳ありません。私からは何も言えません」

穂華はすぐに、龍巳に電話をかけた。
「あ、もしもし。
たっちゃん?」
『穂ちゃん?今日ごめんね……
寂しい思いさせて……』
「帰りが遅くなるって、もしかして━━━━」
『消してあげるよ。お昼に言ったでしょ?』
「え?」
『今、穂ちゃんが思った通り、一式を消してあげるね!』
「や、やめて!お願い!」
『一度、穂ちゃんのお陰で許されたのに、穂ちゃんを傷つけたよね?
もう、許されないよ…!』
「今どこ?私もそっちに━━━━」
『穂ちゃん』
「え?」
『もし…マンションから出たら……
穂ちゃん、壊されるだけじゃ済まないよ…!
まぁ…その前に出れないと思うけど……
とにかく、いい子で待っててね!』
そこで、通話を切られた。

「どうしよう……」
< 47 / 52 >

この作品をシェア

pagetop