好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「どう、でした?」

診察が終わって待合に出ると、礼さんが待っていた。
怖いなと思いながら、私は尋ねた。

「うん、十二月が予定日」
「え、私も同じです」
「じゃあ」
「はい」

ヤッターと声を上げて私たちは抱き合った。
よかった。これで一緒にお母さんになれる。そのことがなによりもうれしかった。



「帰ろうか?」
「はい」

結局、半日以上病院にいた。
おかげで一通りの健康診断もしてもらったし、紹介状ももらって改めて病院選びもできる。
もううれしい以外の思いはないけれど、不安なことはただ一つ。

「着信すごくないですか?」
「うん、かなりマズイ」

ですよね。メールと着信がすごい数。
でも、妊娠を告げれば機嫌も直るでしょう。
その時の私はそう思っていた。



「「オイッ」」
病院を出た瞬間、どすのきいた低い声に呼ばれた。

「空」
「遥」

嘘、何で?

そこにいたのは仕事が忙しいはずの旦那様たち。

「連絡が付かないと思ったら、どういうつもりだ?」
ギロッと睨みながら近づいてくる遥。

「コソコソと有給とって、何してるんだ?」
空さんの声もすごく怖い。

「あのね、はっきりしてから言うつもりだったのよ。隠すつもりはないの」
だから怒らないでと礼さんが私の前に出たけれど、
「礼っ」
空さんに一括されて腕を引かれてしまった。

「萌夏、帰るぞ」
遥も私の腕をがっしりとつかんだ。

こうなったら素直について行くしかない。
きっと怒られるだろうけれど、仕方ない。


それぞれの車に乗せられ、少し説教されて、その後は予想通り喜んでくれた。
礼さんの所もきっと同じだろうと思う。

同じ年、同じ月が予定日の私たちは同じ病院での出産を決めた。
遥と空さんのようないいライバルになることを願って・・・



fin
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