好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「おはようございます」

高野君が大地を連れてやってきたのは朝の七時過ぎ。
私は大地の好きなフレンチトーストを用意して待っていた。

「うわ、美味そう」
妙に明るく嬉しそうな高野君。

「どうぞ、ソーセージもパンもお変わりがあるからたくさん食べてね」

大地の好きなグレープフルーツの入ったサラダをよそいながら、チラッと大地を見る。
考えてみれば最近、特に朝は大地との会話がなかった。
何を話しかけても「うん」「いらない」そんな単語しか返ってこなくなっていた。
まあ朝だしきっと眠いのよねくらいにしか思っていなかったけれど、それが前兆だったのね。

「さあ、どうぞ」

テーブルに並んだフレンチトーストと、ソーセージとスクランブルエッグ。
サラダはレタスとトマトとグレープフルーツ。
私と高野君にはコーヒーを入れて大地にはオレンジジュース。
いつもと変わらない朝なのに、

「・・・」
大地はうつむいたまま何も言わない。

「じゃあ、食べましょうか」
あまり追い込むのもよくないかと、大地の態度には触れずに高野君を見た。

しかし、

「大地、何か言うことあるだろ」
高野君の方が振ってくれた。

それでも大地は下を向いたまま。
これって、叱られて反省しているときの大地。
わかっているから、

「ねえ、もう」
いいよと言いかけたのに、
「ダメです」
強い言葉で止められた。

「大地。昨日、約束したよな?」
声を落としてまっすぐに大地を見る高野君が、少し怖い。
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