好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「聞こえなかったことにしないでくださいね」

うっ。
高野君ってこんなに意地悪な人だったっけ。

「結構わかりやすくアピールしていたつもりですが?」
「ぅ、うん」

確かに、そんな予兆はあった。
初めはかわいい後輩としか思っていなかったけれど、萌夏ちゃんの事件があり平石の関係者なんだと気づいて騙されたような気になった。
無意識に距離を置くようになった私に高野君はやたらと距離を詰めてきて、そのうち「もしかして好かれているのかも」と気が付いた。
特に異動が決まってからは、かなりあからさまに態度に出ていた。
それでも、見ないふり、聞かないふりをしていた。
だって、大地ができた時にもう恋はしないって決めたから。

「そんな顔しないでください。振られたみたいで傷つきます」
「・・・ごめん」

はあぁー。
高野君の大きなため息。

「もう同僚でも後輩でもありませんから、これからは全力で向かって行きます。覚悟しておいてください」
「そ、そんなぁ・・・」

これはもしかして宣戦布告?
私は、高野君のスイッチを入れてしまったのかもしれない。
四つも年下の財閥の訳あり御曹司。
長身で、見た目もよくて、仕事もできて、欠点がなさそうに見える王子様がなんで私なんかに興味を持つのかさっぱりわからない。
ただ確かなのは、この恋はうまくいかない。

ブーブーブー。
高野君の携帯が着信。

「ちょっとごめん」
相手を確認して電話に出る高野君。

どうしたんだろう、仕事のトラブルかなあ。

「ええぇー」
珍しく驚いた声を上げた高野君が、私を見ている。

え、え?何?
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