好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「ほら、行きますよ」
「ぅ、うん」

大地の学校の先生と面談をするため半休をとった礼さんに、とにかく非常事態だからと学校に電話をさせて、その間に身支度をした俺は自分の車に礼さんを乗せた。

「大地の学校、大丈夫ですか?」
「うん。電話で事情を説明したし、何かあればすぐに知らせますって言ってもらったから」

昨日初めて会った大地だが、年齢の割にはしっかりしていて頭のいい子だなという印象。
礼さんのことを気遣いながら自分の信念も曲げない、そんな芯の強さも感じて好感を持った。
まだ子供だから間違った選択をすることもあるだろうし、実際昨日のことだって現実逃避でしかない。
嘘をついて学校を休んだってすぐにばれるのに、そこが分からないのが子供らしくてかわいいとさえ思えた。
まあ、それだけ大地も悩んで追い詰められていたってことだろうが。

「大地のこと、怒ったらだめですよ」
まっすぐ前を見ながら、礼さんに声だけかけた。

「うん、わかってる」

「でも、悪いことは悪いと叱ってください」
「ずいぶん矛盾しているわね」
不満そうな口ぶりの礼さん。

はあぁー。
この人も、うちの母さんと同じか。

「いいですか、感情的に怒りをぶつければ大地は傷つきますし礼さん自身も後々後悔することになります」
「うん、そうね」
「でも、人に嘘をついたり、学校をさぼったり、心配をかけたり、やってはいけないことはいけないと伝えないとダメです。そこに、一人親で寂しい思いをさせているからとか、時間がなくてかまってやれない自分が悪いからってのは関係ありませんから」

礼さんからの返事は聞こえてこなかった。
どうやら、痛いところを言い当ててしまったようだ。
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