好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「体は大丈夫かね?」
「え、ええ」

きっとこの頭痛の原因を作ったのはこの人。
それなのに、なんでこんなに穏やかな顔をするんだろうか。

「今、医者を呼ぶからな」

私が寝かされていたベットの横に置かれていた椅子から立ち上がり、部屋を出ようとする男性。
悪い人には見えないけれど、ここに連れてこられた経緯を考えると素直に従う気にはなれない。

「あの、平気ですから」
医者なんて必要ないと言ってみた。

しかし、男性は部屋の外へと続く障子を少し開け誰かに何か指示を出している。
話している相手は見えないけれど、障子越しに見える人影から相手が膝をついて男性の指示を受けているのはわかる。

この人、何者だろう。

見た目の年齢は70歳くらい。
白髪で穏やかそうなおじいさまって印象の男性。
平石のおじいさまよりも少し若く見える。
着ている服も身のこなしも上品で、お金持ちというより高貴な感じ。
間違っても人を誘拐するような人には見えない。

「一応医者に診てもらった方がいいだろう」

その原因を作った人に言われるのも変な気分だと思いながら、私はうなずいてしまった。
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