白鳥学園、いきものがかり
茹でタコの先輩が口を紡いでから、私に手を伸ばす。
——————しかし、
「ッ…!!」
私の隣から何かが風を切った。先輩は顔面目掛けて飛んできたそれをギリギリで躱した。その拍子にポーチが床に落ちる。
…っ、足?
「退けろ、」
紘の声だ。
距離を取る先輩に構わずポーチの中を漁っている。
抱えられ、紘の胸の中。
口元に持って来られた吸引器を無我夢中で口の中へ。
…震えてる。
呼吸が荒くて、過呼吸気味にもなってる。
「安心しろ。もう怖くねーから」
私の頭の上に乗った手と優しい声。
…さっきまでの低い声が嘘みたい。
「ゆっくりでいい…そう、それでいい」
薬の味がした。
「…お前、どういうつもりだ?」
先輩の低い声がする。
紘は一瞬ちらりと見たが、直ぐに私の方を向き優しく声を掛けてくれた。
「聞いてん————、!」
「黙れ。紬が吃驚すんだろうが」
静まり返る廊下。
ようやく落ち着いた私を見て、紘は安堵の溜息を吐いた。抱えられて立ち上がる。