冷徹上司の、甘い秘密。



「課長、確認お願いします」


「……そこに置いておいてくれ」


「かしこまりました。よろしくお願いします」



 頭を下げて課長のデスクを離れる。


 課長はあれ以来、仕事に一層厳しくなったような気がする。


 そして今まで以上に物凄い数の仕事をこなしているように感じた。


 なのに課長は決まって、私から話しかけられると一度動きを止める。


 そして何事もなかったかのように振る舞うのだ。


 それがなんだか変に気を遣わせてしまって申し訳ないという気持ちともう私のことなんて気にしないでほしい、という負の感情で胸の中が支配される。


 部署内全体が忙しいからか、相田意外誰も私達のぎこちない空気には全く気付かず、何かあったかなんて微塵も疑問に思っていないようだった。


 そんな今日は金曜日で、新入社員の歓迎会の予定だ。


 いつもは参加自由だが、今日に限っては特別な理由がない限り強制参加。歓迎会だから仕方ない。


 気まずい気持ちのまま相田と一緒に居酒屋に入った。


 飲み会自体はとても楽しかった。元々お酒は好きだし、飲み会の空気も大好きだ。


 合コンみたいに変に自分を繕うこともしなくて良い。皆が仕事ではあまり見せない顔を見るのも、結構好きだった。


 途中からはほぼ相田とサシで飲んでいるようなもので。時々話しかけてくる後輩達と会話していたらあっという間にお開きの時間で。


 いつもよりも酔っ払ったらしい相田をタクシーに突っ込んで、相田の家の住所を運転手さんに伝えてそのまま発進してもらう。

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