すてきな天使のいる夜に~3rd story~
家から学校までは、電車とバスを使いながら通っている。
リュックには、念の為にとヘルプマークをつけていた。
病気が見つかってから、紫苑と翔太に、
「電車やバスは、いつでも座れるとは限らないから、念の為に持っていた方がいいよ。」
そう言われ、渋々リュックにつけている。
このマークのことは、紫苑に詳しく聞いていた。
席を譲ってくれる優しい人に、少しだけ気が引けてしまう。
「沙奈、おはよう。」
電車に揺られながら、窓の外の景色を見ていると私の隣に音羽が座った。
「音羽。おはよう。」
「おはよう、沙奈。音羽。」
大きな欠伸をしながら、瑛人は1駅先の駅から乗って私の隣に座った。
「瑛人。おはよう。
何か、眠そうだね。」
音羽は、いつも以上に眠そうな瑛人を見ながら楽しそうに笑っていた。
「昨日の課題、思ったより難しすぎて遅くまでかかっちゃったよ。」
「あー、昨日の課題か。補習を受けながら授業を受けてるはずなのに全然頭が追いついていかないよ。」
頭を抱える音羽の頭に、私は苦笑い。
「沙奈はどう?勉強、分からないこととかある?」
「そうだね…。ここ最近でやっと授業に追いついて来たように感じるけど、やっぱり今まで以上に復習と予習をしないといけないから、ちょっとだけ辛いかな。」
入院期間が長かった分、今までの勉強を取り戻すことが1番大変だった。
だけど、夏休みの補習や放課後の補習、紫苑や翔太の力を借りながら、やっとみんなと並んで授業を受けられている。
「そうなんだよね、進んだ分復習しないと頭に入っていかないし、やらないと次の日の授業はちんぷんかんぷんだよね。」
音羽は、大きな溜め息を漏らした。
「そういえば、音羽と瑛人は大学どこ希望してるの?」
2人は、大学に進学することしか聞いていなかった。
具体的な学部とか、将来の夢とか話したことがない。
「あれ、私沙奈に話さなかったっけ?
沙奈と同じ大学に進学する予定。」
「俺も。沙奈の歩む道を一緒に歩みたいと思って。」
「何かっこいいこと言ってるの?瑛人。
私達さ、沙奈が病院で頑張って来たこと知ってるから。
近くで沙奈のことを見てきて、私も少しでも人の役に立てる仕事が出来たらいいなって思ったの。
何となくで、進学クラスに進んでいたけどやっとなりたい自分が見つかった。」
「俺もさ、本当は中学の時からせっかく産まれて来たんだから、何かしらの形で人と繋がることが出来る仕事をしたいなって思っていたんだ。
俺の手で、多くの人の命を救えたら超かっこいいじゃん?
最初はそんな軽い気持ちだったんだけど、沙奈のことやお見舞いにきて色んな病気を抱えて頑張ってる人達を見てきて、この人達のために俺ができることをしたいって思ったんだ。」