オスの家政夫、拾いました。1. 洗濯の変態編
世間知らずの女子高生でもあるまいし、今編集長が言っている言葉の意味は説明を聞かなくても分かる。彩響はその場で立ち上がった。これ以上ここにいたら精神が崩壊しそうだった。


「編集長、おやめください。私の我慢にも限界があります。奥様や子共に恥ずかしくありませんか?」

「はあ?なんだよ、お前も俺に気があるんだろう?俺に表現できてないだけで…」

「全く、これっぽっちも、興味ありません。編集長、いい加減にしてください。私はあなたの部下であり、こんな風にセクハラしてもいい対象ではありません」

「はあ?セクハラ?お前そんな偉そうな口利いてただで済むと思うか?」

「思いません。しかし編集長もただでは済みません。今後またこんなことをしたら、上に報告します。そして罪のない奥様や娘さんたちにも知らせます」

「お、お前…!女のくせして俺を脅しているのか?!俺にそんなこと言って会社生活ちゃんとできると思うのか?!」

「脅しているのは編集長の方でしょう。あなたがここで止めたら、私もこれ以上なにもしません。もうこれっきりにしてください。私はもう席に戻ります」


大山の叫ぶ声を後にして、彩響はそのままトイレへ走った。強気に出たけど、いざ一人になると体が震えた。気持ち悪い感覚がいまだに体に残っていて、反吐がでる。便器に顔を突っ込んで数回嘔吐した後、やっと震えが止まった。彩響は数回深呼吸して鏡で自分を見た。さっきの明るい顔はもう既にどこかに消え、ひどく疲れた顔の女がそこに立っていた。

「大丈夫、こんなことでやめたりしない」
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