オスの家政夫、拾いました。1. 洗濯の変態編
「たとえ誰かが短いスカートを履いていても、調子にのっても、裸になっていたとしても…」


寛一さんの声が空間に響く。その声はまっすぐで、切実で、とても力を感じられる声だった。


「あなたに、その人を勝手に支配する権利はない。この世の誰にもだ!」


沈黙を最初に破ったのは大山だった。彩響が睨むと、やつはいつも通り嫌味を言い始める。


「は、はははははは!なんだ、峯野お前、こんな従順な奴隷飼ってたのか?さすがだな!」

「まだ戯言を…!」

「胸ちょっと触られたくらいで一々大げさなんだよ。誰もてめえの老けた胸なんか興味ねーから、俺に感謝するべきじゃないの?今からでも遅くないぞ、早く俺に謝って「もっと触ってください」ってお願いすれば…!」


戯言は最後まで続かなかった。すごい音と共に、大山が床に倒れた。振り向くとそこに寛一さんが腕を上げている。


(なんなの、今の?)


状況が把握できない。目の前の光景を判断するには、意外と時間が必要だった。


(まさか、今殴ったの?寛一さんが?)

「…それ以上吠えてみろ。次は本当にぶっ殺す」


寛一さんの言葉に、沈黙が流れる。しばらくして、隣で警官が大山を立たせた。結構な力だったらしく、唇から血が出ていた。

「警察官の皆様、俺を暴行で逮捕しても構いません。しかし、今日は彩響さんを安定させるのが大事ですので、これで失礼します。用があったら後日ご連絡ください」

そう言って、寛一さんが彩響の手を引っ張る。

「行きましょう、彩響さん」

「で、でも…」

「話は後です。行きましょう」

寛一さんはそれ以上なにも言わなかった。代わりに強い視線でじっと彩響を見つめた。それを見て、彩響も頷いた。


「…はい」


そのまま二人は署を出た。


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