もっと蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻への溺愛を止められない~


「良いのですか? 千夏(ちなつ)さんは、少し困っていらっしゃったようですけど……」

「いいんです、千夏はこうでもしないとあの家から出ようとしませんから。それに月菜(つきな)さんに会えば彼女も少し前向きになるかもしれません」

 普段は相手の考えを尊重するタイプの柚瑠木(ゆるぎ)さんがそう言うのならば、そこにはちゃんとした理由があるはずです。それに私は千夏さんに会えるのが楽しみでもあったので、これ以上は彼の意見に反対もしませんでした。
 柚瑠木さんは私と手を繋ぎ、売店でコーヒーと眠気覚まし用のタブレットを購入してそれを手渡してきます。

「まだ、目的地まで少し時間がかかりそうですから」

「柚瑠木さんと一緒なら、緊張で眠くなんて……」

 渡されたタブレットを見ながらそう呟くと、彼は困ったように微笑んで……

月菜(つきな)さんは毎晩、この僕の隣で熟睡してるのに? そんな貴女の寝顔も可愛いですが、今日はもっと二人で話をしたいので」

 夜に眠るのは仕方がない事なのでは? それに柚瑠木さんから優しく抱きしめられていると、安心してよく眠れるのです。
 でも、もっと話したいと言われるのは嬉しいので、私はコクンと頷いて歩き出した柚瑠木さんについて行きます。

「すっかり暖かくなりましたね……」

「そうですね、春は月菜さんに似合う季節だと思います」

 柚瑠木さんからの優しい言葉に、私の頬も春色に染まりそうで……本当に困ってしまいます。


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