君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

私のバカ!と睡魔に耐えられなかった自分を叱る。
それより、いつまでもお邪魔しているわけにはいかない。

「すみませんが、今は何時でしょうか?」

「二十三時ぐらい。朝まで寝るかなと思っていたからそっとしといたけど、起きたならシャワーを浴びておいで」

「でも……」

「時間も遅いし今日は泊ったらいいよ」

副社長は何でもないように言う。

「そんなことできません」

社長からお世話を頼まれたのに、役に立つどころか迷惑しかかけていない。
泊まるなんて滅相もないよ。

「伊藤さんは真面目だね」

目を細めながら言う。
色気たっぷりの表情にドキリとする。

「前から思ってたんだけど、伊藤さんは俺のこと苦手?」

「いえ、そんなことないです」

「ホントに?話しかけてもあまり目を合わせてくれないし、避けられているのかなと思って」

どうしてそんな風に思うんだろう。
それを言うなら私の方だ。

「副社長の方が私のことを苦手なんじゃないですか?」

「どういうこと?」

「だって、私は真面目過ぎて面白みもないから話しかけずらいですよね?話しかけられても上手い返しが出来ないのは自覚してます。それに私のことだけ苗字で呼ぶし……」

「えっ」

副社長はキョトンとした表情を浮かべている。
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