君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

「俺の服を着ている香澄を見られる日がくるなんてね」

さっきから普通に私のことを“香澄”と呼んでくれている。
遠かった存在の副社長と気持ちが通じ合う日が来るなんて信じられない。
自分の置かれている状況がうまくのみ込めず、ソワソワしてしまう。
それに、今日は副社長の家に泊まるんだよ……ね。
うわー、どうしよう。
変に意識してしまい、それを誤魔化そうと口を開いた。

「あの、副社長が片付けられたんですか?」

「あー、そうだね。さすがにゴミが散らかり過ぎてたから、ちょっと頑張ってみた」

そう言って照れくさそうに言う副社長にキュンとした。
こんな可愛い一面も持っているなんて反則だ。
ニヤついていた私の口は滑らかになっていた。

「私、人の家に泊まるのが初めてなんです」

集団の宿泊学習はあるけど、友達の家に泊まりに行ったことがない。
親戚の家とかは別だけど。

「へぇ、そうなんだ。付き合うのも初めて、キスも初めて、泊まりも初めてか。これからも香澄のいろんな初体験を俺がいろいろもらえそうだな」

そう言って意味深に笑う。
言葉の意味を理解し、顔がボッと赤くなる。
それってつまり……そういうことだよね。
ソファから立ち上がった副社長はカチコチに固まった私を見て楽しそうに笑う。

「大丈夫。今日は何もしないよ。おいで」

手を私の方に差し伸べてくる。
私はおずおずとその手を握った。
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