あの日、小猫と出会ったから
オッドアイの相棒
入り口に準備中の札が掛かっている、下町の食堂。夕食時にはまだ早いその時間に、俺はカウンターの隅でホットサンドを頬張っていた。
ここの主人――俺は大将と呼んでいる――は、俺がこの街に流れてきたころからの付き合いだ。営業時間前に立ち寄っても、嫌な顔せず迎えてくれる。そして料理の腕は天下一品だ。俺が知る範囲では、だけど。
「ご馳走様、大将。これ、丁度で釣り無しね」
小銭を三枚カウンターに置き、俺は席を立った。
「おう、まいどあり。そうだ、焦げちまったフライ持ってかないか、ジェイミー」
「いるいる! 最近どんだけ食っても腹減ってさぁ。セイチョウキって奴かな」
「だろうな。今年で十四だったか?」
「多分ね」
「沢山食ってでかくなれよ」
クルクルと新聞紙に包まれた焦げフライを有難く頂戴し、俺は我が家へ向かった。
我が家なんて言ってるけど、その実、勝手に廃屋に住み着いてるだけだったりする。建てるのに金が掛かれば壊すのにも金が掛かるとかで、長らく放置されてる半壊の三軒長屋。その一室を無断で間借りしている。
扉が無いので出入り自由、見咎めるような奴は居ない。俺と同じ家無しの人が隣の部屋に雨宿りに来たり、たまに女連れ込んだりしてるけど、住みついてるのは俺だけみたいだ。まれに誰かと鉢合わせしても、大抵の場合眼帯を外した俺の顔を見て逃げて行く。逃げずに縄張り争い吹っかけてくるのは、野良猫のボスくらいだ。
今日の稼ぎは小銭入れが二つ。偶然紙幣が一枚入ってたから、しばらく営業しなくても済むだろう。仕事なんてのは生きてく手段だ、大金は要らない。毎日飯が食えりゃ、それで良い。
動物的な勘と器用な手先、そして頭の回転だけでなく演技力も必要なのが俺の仕事。ただし、古今東西『犯罪』に分類されてる類いのモノだから、おおっぴらには口に出来ない。
『このままでいいのか?』
ちくりと痛む胸の辺りから声がする。
「仕方ねーだろ、好きでやってんじゃねーや」
あえて声に出して、俺は良心の声を追っ払った。
水平線に向かって落ちてくお陽様が、空の青に朱い息を吹きかける。水色と橙色が混じり合い、青にも緑にも見える碧い空が出来上がる。ほんのり雲を縁取る山吹色が眩しい。
さてと、相棒の待つ家に帰るとするか。俺はパンの耳と小さなミルク瓶が入った紙袋、そして大将にもらった焦げフライが入った新聞紙を抱えて夕陽色の橋を渡った。
ここの主人――俺は大将と呼んでいる――は、俺がこの街に流れてきたころからの付き合いだ。営業時間前に立ち寄っても、嫌な顔せず迎えてくれる。そして料理の腕は天下一品だ。俺が知る範囲では、だけど。
「ご馳走様、大将。これ、丁度で釣り無しね」
小銭を三枚カウンターに置き、俺は席を立った。
「おう、まいどあり。そうだ、焦げちまったフライ持ってかないか、ジェイミー」
「いるいる! 最近どんだけ食っても腹減ってさぁ。セイチョウキって奴かな」
「だろうな。今年で十四だったか?」
「多分ね」
「沢山食ってでかくなれよ」
クルクルと新聞紙に包まれた焦げフライを有難く頂戴し、俺は我が家へ向かった。
我が家なんて言ってるけど、その実、勝手に廃屋に住み着いてるだけだったりする。建てるのに金が掛かれば壊すのにも金が掛かるとかで、長らく放置されてる半壊の三軒長屋。その一室を無断で間借りしている。
扉が無いので出入り自由、見咎めるような奴は居ない。俺と同じ家無しの人が隣の部屋に雨宿りに来たり、たまに女連れ込んだりしてるけど、住みついてるのは俺だけみたいだ。まれに誰かと鉢合わせしても、大抵の場合眼帯を外した俺の顔を見て逃げて行く。逃げずに縄張り争い吹っかけてくるのは、野良猫のボスくらいだ。
今日の稼ぎは小銭入れが二つ。偶然紙幣が一枚入ってたから、しばらく営業しなくても済むだろう。仕事なんてのは生きてく手段だ、大金は要らない。毎日飯が食えりゃ、それで良い。
動物的な勘と器用な手先、そして頭の回転だけでなく演技力も必要なのが俺の仕事。ただし、古今東西『犯罪』に分類されてる類いのモノだから、おおっぴらには口に出来ない。
『このままでいいのか?』
ちくりと痛む胸の辺りから声がする。
「仕方ねーだろ、好きでやってんじゃねーや」
あえて声に出して、俺は良心の声を追っ払った。
水平線に向かって落ちてくお陽様が、空の青に朱い息を吹きかける。水色と橙色が混じり合い、青にも緑にも見える碧い空が出来上がる。ほんのり雲を縁取る山吹色が眩しい。
さてと、相棒の待つ家に帰るとするか。俺はパンの耳と小さなミルク瓶が入った紙袋、そして大将にもらった焦げフライが入った新聞紙を抱えて夕陽色の橋を渡った。