あの日、小猫と出会ったから


「ジェイミー、昨日はどうした? 珍しく姿見せないから、マフィアに他所へ連れてかれたんじゃないかって心配したぞ」
 俺の姿を見るなり、大将は心配そうな顔をしてそう言った。やっぱりイルジアさんのマフィア疑惑は晴れていないようだ。
「ごめん、大将。昨日はちょっと友達のとこにお呼ばれしてたんだ」
「そういう事なら良かった。で、注文はいつものホットサンドか?」
 大将はいつも通り笑いかけてくれる。俺の左目は、まだ布の下にある。
 ここまで来て逃げんな。勇気出して向き合え。シェリフに言った言葉を、自分にも言い聞かせた。
「ううん、今日はホットサンドはいいや。それより俺、大将に話さなきゃいけない事があって来たんだ」
「なんだ、ジェイミー。悩み事か? なんでも聞いてやるぞ」
 大将は優しく俺に向き合ってくれる。不安と同時に、微かな期待が俺の中に生まれた。それに後押しされて、左目を覆う布に右手を掛ける。
「ごめん、大将。俺、ずっと嘘ついてた」
「どうした、ジェイミー。いきなり何の話……」
 眼帯を外して大将を見上げる。目が合った途端、大将は言葉を失った。
「俺、大将が思ってるような良い子じゃない。ずっと、大将に嘘ついてた。この前巡査が話してた掏摸って、俺の事なんだ」
 目を逸らさずに大将を見る。本当の自分をさらけ出す。大将も俺をまじまじと見つめた。その目が驚きで見開かれていく。
「お前、その目……」
「騙しててごめん、大将」
 深く頭を下げた。掏摸だと明かしたのに、オッドアイである事を指摘した大将。横っ面を思い切り張られた気がした。
「どうして……」
「嘘ついてて、本当にごめん。俺、片目じゃなくてオッドアイだったんだ。日雇いなんかしてない、他人から掏って生きてた。でも、もう盗みは止める。真っ当な人間になりたい。だから、明日自首してくる」
 明らかに大将は動揺していた。それもそうだろう。良い子だと信じていた奴が犯罪者だったと聞かされて、戸惑わない人はいない。おまけに嘘吐きで、姿は化け物ときた。これで平然としていられる訳がない。
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