あの日、小猫と出会ったから
「じゃあ、どこに泊まってるのかな? お父さん達は?」
「父様はね、お家に居るよ。母様もね。僕、学院お休みして、兄様と、兄様の先生とここに来たの」
おい、ちゃんと学校行けよ。サボるな。
「ちゃんとみんなに着いてってたんだけどね、途中で綺麗なネコちゃん見たから、追っかけたの。そしたらね、みんなとはぐれちゃったの」
こんな好奇心の塊みたいなちまいガキ、もうちょっと監視しとけよ、兄貴。
「とっても真っ白なの。それに尻尾がしゆっとしててね、綺麗なの」
歳の割りには喋り方が妙に幼い気がする。しかも『しゆっとしてる』って、どういう表現だ。
「お兄ちゃん、そのネコちゃん知らない?」
「うーん、ここに来る間は猫に会わなかったなぁ」
それより兄貴のとこに帰れよ。そしてまともに稼がせてくれ。
下心ありありな俺に気付かず、坊ちゃんは残念そうに肩を落とした。
「会いたいなぁ、真っ白なネコちゃん」
余りにも悲しそうなその顔に、なんだか悪いことをした気になる。いや、俺は何もしてないんだけど。
真っ白な猫か。尻尾がしゆっとしてて……。
「俺の相棒、その猫に似てるかも」
アイの姿を思い出してそう言うと、坊ちゃんは小首を傾げてキョトンと俺を見上げた。
「あいぼー?」
どうやら言葉が分からなかったらしい。一体、幾つなんだ。
「友達ってこと。すぐそこだし、多分居るから見に来るか?」
「うん! 行く行く!」
しょげてた顔が笑顔になる。良い事をした気がして、ちょっと嬉しくなる。
「ただし、見た後はちゃんと帰るんだぞ。俺、送ってくから」
「うん、わかった」
お坊ちゃんは嬉々としてついてくる。あまりにも純粋すぎる。簡単に人攫いにあいそうだ。
「俺、ジェイミー。お前は?」
「おま?」
そうだ。お坊ちゃんには俗っぽい言葉は分からんか。丁寧な言葉に言い直す。
「君のお名前は?」
お坊ちゃんは少し考えて、にっこり笑った。
「リフって呼んでもいいよ」
上から目線がいかにもお坊ちゃんだ。コノヤロウ。
「オーケー。じゃあリフ、君の泊まってる所はどこ?」
「わかんない」
「だよな」
まいったな。本来迷子は交番に連れてけば良いんだろうけど、俺はあそこと相性が悪い。それに、交番に連れて行っても稼げないし。
「こんな所だったっていうのでいいよ。でっかい木があったとか、何色の建物か、とか」
「ジェイミーはネコちゃんとお友達なの?」
おい、俺の質問に答えてないぞ、リフ。
「まあな。俺にとっては一番の親友だ。猫がどう思ってるかは知らないけど」
親友の意味を問われるかと思ったが、リフは『いいなぁ』と羨ましそうに呟いただけだった。
「それより、いいのか? 早く帰らないと、兄貴や先生に怒られるだろ」
「別にいいもん」
坊ちゃんは急に悲しげな顔をして、俯いた。大きな海色の瞳が流れの速い川面を見つめる。
「みんな、僕なんかいらないんだもん……」
「父様はね、お家に居るよ。母様もね。僕、学院お休みして、兄様と、兄様の先生とここに来たの」
おい、ちゃんと学校行けよ。サボるな。
「ちゃんとみんなに着いてってたんだけどね、途中で綺麗なネコちゃん見たから、追っかけたの。そしたらね、みんなとはぐれちゃったの」
こんな好奇心の塊みたいなちまいガキ、もうちょっと監視しとけよ、兄貴。
「とっても真っ白なの。それに尻尾がしゆっとしててね、綺麗なの」
歳の割りには喋り方が妙に幼い気がする。しかも『しゆっとしてる』って、どういう表現だ。
「お兄ちゃん、そのネコちゃん知らない?」
「うーん、ここに来る間は猫に会わなかったなぁ」
それより兄貴のとこに帰れよ。そしてまともに稼がせてくれ。
下心ありありな俺に気付かず、坊ちゃんは残念そうに肩を落とした。
「会いたいなぁ、真っ白なネコちゃん」
余りにも悲しそうなその顔に、なんだか悪いことをした気になる。いや、俺は何もしてないんだけど。
真っ白な猫か。尻尾がしゆっとしてて……。
「俺の相棒、その猫に似てるかも」
アイの姿を思い出してそう言うと、坊ちゃんは小首を傾げてキョトンと俺を見上げた。
「あいぼー?」
どうやら言葉が分からなかったらしい。一体、幾つなんだ。
「友達ってこと。すぐそこだし、多分居るから見に来るか?」
「うん! 行く行く!」
しょげてた顔が笑顔になる。良い事をした気がして、ちょっと嬉しくなる。
「ただし、見た後はちゃんと帰るんだぞ。俺、送ってくから」
「うん、わかった」
お坊ちゃんは嬉々としてついてくる。あまりにも純粋すぎる。簡単に人攫いにあいそうだ。
「俺、ジェイミー。お前は?」
「おま?」
そうだ。お坊ちゃんには俗っぽい言葉は分からんか。丁寧な言葉に言い直す。
「君のお名前は?」
お坊ちゃんは少し考えて、にっこり笑った。
「リフって呼んでもいいよ」
上から目線がいかにもお坊ちゃんだ。コノヤロウ。
「オーケー。じゃあリフ、君の泊まってる所はどこ?」
「わかんない」
「だよな」
まいったな。本来迷子は交番に連れてけば良いんだろうけど、俺はあそこと相性が悪い。それに、交番に連れて行っても稼げないし。
「こんな所だったっていうのでいいよ。でっかい木があったとか、何色の建物か、とか」
「ジェイミーはネコちゃんとお友達なの?」
おい、俺の質問に答えてないぞ、リフ。
「まあな。俺にとっては一番の親友だ。猫がどう思ってるかは知らないけど」
親友の意味を問われるかと思ったが、リフは『いいなぁ』と羨ましそうに呟いただけだった。
「それより、いいのか? 早く帰らないと、兄貴や先生に怒られるだろ」
「別にいいもん」
坊ちゃんは急に悲しげな顔をして、俯いた。大きな海色の瞳が流れの速い川面を見つめる。
「みんな、僕なんかいらないんだもん……」