あの日、小猫と出会ったから
 騒動を起こした、命令に逆らった、器物を破損した等、身に覚えのない理由で俺にだけ懲罰命令が下った。隔離小屋に監禁。期間、四週間。
 寒空の下、ポツンと建っている隔離小屋に連れて行かれた。格子状の柵の向こうにある鉄の扉を閉じられると、換気の為の小さな格子窓からしか光は差し込まない。
 季節は冬。手錠をかけられたまま、俺はその暗がりに閉じ込められた。
「まだ生きてたのか、化け物」
 見回りに来る度、例の看守はそう言って舌打ちした。
 寒さと孤独にひたすら耐えた。夜になり、完全な暗闇になると気が狂いそうになった。金属製の手錠が手首を凍らせて酷く痛んだ。
 ある日、夜中に見回りに来た別の看守が、凍傷になった俺の手首を見て手錠を外してくれた。今年は例年に無い寒さだから、と言ってもう一枚毛布をあてがってくれた。しかし翌朝、俺を目の敵にしている例の奴がやって来て、ご丁寧に手にも足にも錠をかけて行った。
「寒い……」
 気温がぐっと下がった夜、みぞれが雪になった。小さな格子窓から覗いた外は白い世界だった。
 生まれて初めて、雪を見た。綺麗だ、と思った。真っ白で、キラキラしていて。その白さにアイを思い出した。枕元で眠るアイの温もりを。
 そう言えば、あいつも温かかったな。俺の懐で眠っていた小猫も。
『ジェイミーは、僕の友達!』
 暗がりの中、凍てつく寒さに震えながら、俺は記憶の中の温もりに向かって必死に手を伸ばした。
 寒い。寒い。
 身体が、心が凍えている。
 アイが恋しい。温もりが欲しい。
 シェリフの笑顔の温かさが恋しい――
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