あの日、小猫と出会ったから
「わぁ、綺麗! アイとお揃いだね、いいなぁ」
「あ、う、えーと、」
 俺は反応に困った。疎まれる事はあっても、羨ましがられたのは初めてだ。
「リフの国では、オッドアイって怖がられないのか?」
「どうなのかな、わかんない。だって初めて見たもん。それに、とっても綺麗じゃない。僕、怖くなんかないよ」
 きっぱりと言い切るリフに悪戯心が湧いて来て、俺は不敵に笑った。
「本当に? オッドアイって、目が合うと記憶が無くなるんだぜ」
 視線を合わせたまま、至近距離まで顔を近づける。ぱちぱちと瞬きする海色の瞳。目を逸らす気配はない。
「試してみるか?」
 出来る限り悪っぽい雰囲気を醸し出して脅して見た。
 が。
「あ、僕ね、覚えるのとっても得意なんだよ。十桁位の数字なら、一度見ただけで覚えられるの。すごいでしょ」
 怖がる事も逃げる事もせず、素晴らしい暗記力を自慢された。くそぅ。
 アイを撫でながら、リフは楽しそうに笑う。
「それに、目が合って記憶が無くなるって言うなら、僕の記憶とっくに無いでしょ」
 それもそうだ。ものすごい凝視してたからな。
 アイの横腹にもふっと顔を埋めて、リフはもごもごと何か言う。
「……本当に無くなれば良いのに」
「え?」
「アイの毛並、ふわふわで気持ちいいね。なんか、お陽様の匂いがするよ」
「まあ、日向ぼっこ好きだからな」
 なんか、ごまかされた気がする。問い詰めるべきか迷っていると、ふとある事に気がついた。
「お前、その腕どうした?」
 可愛い可愛いとアイを撫でているリフの袖口からちらりと見えた、手首より少し下の部分が赤くなっている。
「あ、これはね、ケガじゃ無いよ。ネコちゃん追いかけた時にね、転んでぶつけたの」
 転んでぶつけたってことは、結局ケガじゃねぇかよ。しかも結構腫れてるし。
「ほら、腕出せよ。湿布貼ってやるから」
 俺は押入れの棚に置いてある箱から湿布を取り出した。以前、俺が捻挫した時に大将がくれたものだ。使用期限は幾らか過ぎているが、何もしないよりいいだろう。
 湿布を貼る為に袖を捲ろうとすると、リフは嫌がった。
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