お嬢様と羊
「そう……」
一弥に抱き締められる、陽葵。

「陽葵さん、ごめん!
もう聞かないから!
ただ、俺達の間じゃスゲー有名だったんだ。
憧れてる奴、結構いるんだ」
空牙が頭を下げ、言った。

「陽葵が、あの秀人さんの女だったとはな……」
「秀人、そんなに凄いの?」
「そりゃあ…喧嘩は強いし、仲間思いだし、確かに冷酷なとこあったけど、惚れた女にはスゲー甘いって噂でさ!」
「そう…私には優しい秀人しか思い出せない位、いつも笑ってた。
ほんとはね、嫌いなの。喧嘩。
秀人はそんな私の為に、私の前では頑なに喧嘩しなかった。そのせいでボロボロになってたこともあったな(笑)
私が自分の身は自分で守ろうと思ったのは、もう二度と誰も傷つけたくないから。
だから、執事も頑なにつけなかったの。
そんなことしたら、その人が傷つくかもしれないでしょ?」
「だから、最初あんな言い方を……」

仲間のみんなもただ、静かに陽葵の話を聞いていた。

「陽葵」
「何?」
「俺は死なない!約束する!」
「は?んなわけないでしょ?」
「死ぬ時は、陽葵を看取ってからにする!
もちろん、ばあちゃんになった陽葵だぞ!」
「……バカ(笑)」
「秀人さんに憧れてたって言ったろ?
あの人に近づく為に、強くなったんだ!
あの人みたいに、強くて、仲間思いな人になりたくて……
だから、絶対死なない!」

「一弥」
「ん?」
「一弥、約束して?」
「うん」
「危ない時は、私を見捨てて!」
「は?」
「もう、あんな残酷な事は体験したくない!
体験する位なら、死んだ方がいいから!
お願い!!」

「…………わかった」
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