導かれて、放れられない
「じじぃ、勝手に桔梗を拐うんじゃねぇよ!」
「あ?
お前こそ、解放してやれよ。
普通のお嬢さんじゃねぇか」
「できねぇよ」
「は?
お前まで“運命”なんて言うんじゃねぇだろうな」

「運命……じゃなくて、宿命だ。
誰も、俺達をもう二度と引き裂けない」
睨み合う、天聖と聖二郎。

「そうか…
もう、いい。帰れ」
「言われなくても、帰る。
増見!桔梗と先に言っててくれ」
「はい」
「え?天聖さん?」
「すぐ行くから、待ってて」
頭を撫でて、微笑む天聖。
さっきまでの天聖とは別人だ。

その表情に安心した桔梗。
増見と共に、離れを出た。

「なんだ、お前も早く行け!
酒が不味くなる」
「本当の理由を教えろ!」
「は?」
「なんで、桔梗に会おうと思ったんだ?
いつもなら、あり得ない」
「水田 桔梗って名前、覚えないのか?」
「は?だから、宿命だっつたろ?昔、一緒にいた記憶はあるが、よく覚えてない」
「覚えがないなら、話しても無駄だ」
「なんだよ、それ」

「天聖」
「は?」
「お前にとっても地獄だぞ!あのお嬢さんは。
惚れれば惚れる程……
お嬢さんのこと大切なら、解放してやれ」
「放れることが、地獄だ。
…………だから、答えはNOだ」

「フッ…ほんと、お前等は……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
車に乗り込んだ、天聖。
すぐに桔梗の口唇を奪い貪った。
「ンンン……
……天聖、さ…苦しい…」
「ごめん…
どんな話したの?」
「天聖さんから手を引けって……
過酷な世界だから、私には無理って」
「そう…」
「でも、ちゃんと言いました。
もう二度と放れたくないって」
「うん、俺も」
二人はまた、口唇を重ね貪った。
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