とろけるような、キスをして。



 私はセイロンティーを、修斗さんはこのカフェ特製のブレンドコーヒーをそれぞれ注文して、味わいながらゆっくり食べた。



「うまっ。さすが千代田さんオススメ。お洒落な店知ってるねー。俺じゃこんな店は絶対に見つけられない」


「ふふ、千代田さんスイーツ好きみたいで、子ども産む前はよく遠出していろんなところ食べてたんだって」


「なるほどねー、その時にここも知ったってわけか」


「うん。あとは今SNSで流行ってるらしいよ」


「うわー、そういうこと?俺はもうそういう若者の文化には着いていけないよ。時代に取り残されたわ」



 若者って……。まぁ確かに、高校生を日々相手にしているとそう思うのはわかるけど。



「修斗さんはSNSやってないの?」


「うん。生徒が変な投稿してないか稀に監視するためにアカウントは持ってるけど」


「……何それ怖っ」



 最近は学生が面白半分で投稿して、それが一歩間違えれば犯罪になりそうなものだったり実際に問題になったりするものも多いと聞く。



「教師ってそんなこともしてるんだね」


「他の学校はどうか知らないけどね。ま、俺も滅多に見ないけど。生徒のSNSとか見たくないし」


「そうなの?」


「俺の悪口とか書いてあったらなんか嫌じゃん」



 まさかの理由に笑いそうになる。



「修斗さんの悪口言う子なんている?」


「んー……、嫌われていないっていう自信はあるから多分大丈夫だと思うけど。それに生徒たちも教師に監視されてるって知ったら気分悪いだろうしね」



 そんな話をしながら食べ進め、お腹いっぱいになったところでお店を出た。


< 134 / 196 >

この作品をシェア

pagetop