とろけるような、キスをして。



 しばらく涙は止まらなかった。


泣き腫らした目は真っ赤に腫れているのがわかって、それが恥ずかしくて泣き止んだ後もしばらく顔を上げられないでいた。



「……落ち着いた?」



 先生の優しい声に、そっと頷く。


先生は身体を離してくれるのかと思いきや、安心したように笑った後、また私をギュッと抱きしめた。



「……先生?」


「みゃーこ、今日何食べたい?」


「え?」


「晩メシ。一緒に食いに行こ。もちろん俺が出すから」



 それが、私が顔を上げるきっかけを作ってくれているのだとわかって、悔しいような嬉しいような。複雑な気持ち。



「みゃーこの好きなもの、なんでも食べさせてあげる」



 食べたいもの、かあ。



「……じゃあ、焼き肉」



 パッと頭に思い浮かんだものを呟いて顔を上げれば。



「ははっ!了解。とびきり美味い店に連れてってやるよ」



 胸を締め付けるくらい綺麗な満面の笑みの先生が、私を見つめてくれていた。


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