とろけるような、キスをして。



「そういえば、こっちに帰ってくるんなら、仕事はどうする?」


「……それも、探さないとなって思ってる。だからどっちにしてもすぐに帰ってくるのは無理かなぁ」



 東京での仕事を辞めるのは簡単だ。事務職だから私の代わりなんていくらでもいるし、辞めたいって言えばすぐに辞めさせてくれると思う。


でも、さすがに無職状態でこっちに帰ってくるのはリスクが大き過ぎた。


 転職サイトのアプリをいくつかインストールしようかと思って調べていると、先生は少し悩んだ様子を見せる。


そして、何を思ったか驚きの言葉を口にした。



「……じゃあさ、うちで働けば?」


「……は?」



 意味がわからなくて聞き返す。



「うちの学校で働けばいいじゃん」


「……え、いや、私教員免許持ってないし……」



 高卒で就職したから、特別な資格は何も持っていない。



「ははっ、学校は教員だけが働いてるわけじゃないだろ」


「あ、それもそうか」



 確かに言われてみれば。それもそうだ。
用務員さんもいるし、購買のおばちゃんもいる。


他には……えーっと。どんな仕事があったっけ?



「うちの学校事務の人が二人いるんだけど、そのうち一人がもうすぐ産休に入るからって臨時で欠員募集かけるんだよ。
まぁその人が戻ってくるまでの期間限定なんだけど。もしかしたらそのまま雇ってくれるって言うかもしれないし。
特別な資格も必要無いし。まぁ大卒じゃないってのはあるかもしれないけど、そこは俺がどうにかするから。みゃーこは事務職経験者だから多分採用されやすいと思うんだけど。
……どう?興味あるなら俺が話付けるけど」



 学校事務。聞き慣れない言葉に即答はできなかったものの、ありがたい提案だった。


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