とろけるような、キスをして。



「あ」


「えっ、大丈夫か!?切った!?」


「うん。でもこれくらいなら痛くないから大丈夫」


「大丈夫なわけあるかよ。ちょっと待ってろ。絆創膏持ってくるから」



 いや、こんなの舐めときゃ治るよ……。


バタバタと絆創膏を探しに行った先生。


水で傷口を洗い流していると慌ただしく戻ってきて。



「貸して」



 左手の人差し指をぐるっと一周する小さな絆創膏。
こんな些細な傷でもそんな慌てて手当てしてくれるなんて、過保護にもほどがある。


でも、それも先生の優しさだから。



「ありがと」



お礼を告げると安心したように微笑んだ。


先生に見られていると逆に緊張するから見ないで欲しい。


そう告げると、先生も納得したのか大人しくソファに座ってテレビを見始めた。


私はその間にハンバーグを捏ねて、先生希望のチーズを中にたっぷりと入れて。


フライパンで焼く。



「……良い音。楽しみだなあ」



 そんな声がソファの方から聞こえてきて、笑いそうになった。


ちらちらこっちを見てきて、まるで"待て"をされている犬のよう。


 呼んだら一目散に駆けてきそうな気がする。



「もうちょっと待ってて」



 少し声を張って言うと、「はーい」と頷くのが見えた。


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