茨ちゃんは勘違い

「なんス…」

か？と、言い終わらない内に、



ゴシャッ！！



と、鈍い音を立てて、黒酉の拳が生徒の顔面に炸裂していた。

「ぎゃああああぁあぁぁぁっ！！？」

机と椅子ごと吹っ飛ばした黒酉の剛腕は、見る者全てを驚愕させた。

「ちょっ…テメ、何すんだよ！！」

鼻血をボタボタ垂らしながら、生徒が懲りずに噛みついてくる。

「…『テメぇ』？」

黒酉の黒縁眼鏡がキラリと光ると同時に、第二撃が生徒の顎を捉えた。



ぐわごしゃがっきーん☆



「にゃああああぁあああぁぁぁっ！？？！」

何故、猫の鳴き声で悲鳴を上げたのかは知らないが、再び新たな教材等諸々を巻き込みながら、生徒は悶絶する。

「たたた、体罰じゃ…」
「五月蝿い」



ばきっ！



「ちょっまっ…」
「黙れ」



ぐしゃっ！！



「許し…」



ごきごき、めきょっ！！！



「…。」

ものの数分の出来事であった。

生徒はピクピクと痙攣し、制服は初日にして買い代えが必要になる程ボロ雑巾になっていた。

その凄惨な光景を、他の生徒達は声も出さずに見届ける事しか出来なかった。

黒酉は、フルボッコにされた生徒を避ける為に立ち退いていた生徒を一瞥すると、一言、

「早く席に着け。手間をかけさせるな」

と、全く感情を込めずに良い放ち、教壇へ戻った。

生徒達はそれこそマッハで散らかった机と椅子を片付けて、約一名を除き、これ以上無いぐらい姿勢を正して黒酉の方に注目した。