茨ちゃんは勘違い
とはいえ、百合絵の脳は腐りきった妄想で記憶領域を埋めつくしているので、ドロドロのメロメロにしたところで、蛆が湧いて出てくるような気さえする。

百合絵は精一杯可愛い子ぶると、腹の底をご存知の方々ならシバキ倒したくなるぐらいのキャディボイスでこう言った。

「おやすみなさい…」

“うん、おやすみ”

至極普通に、晃は返し、通話終了。

『百合絵は誘惑した!しかし、何も起こらなかった』のは、百合絵の演技力不足だけではなく、単に晃がやや天然だからだろう。

ブツっという切断音と、相手の声の代わりに聞こえてきたツーツーというビジートーンが耳元で鳴ると、百合絵はチッと舌打ちした。

先程までの『可愛い後輩』の姿は何処へやら。

すっかり元のヤクザモドキに戻っている。

「中々堕ちないわねぇ…ま、今日はこれくらいで勘弁してやらぁ」

何を勘弁するのか意味不明だが、何はともあれ、こうして百合絵の高校生活一日目は幕を閉じた。
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