茨ちゃんは勘違い
…。

……。

………。

瞬間、時が止まった気がした。

特に義和の動きは。

やはり、なるほどザ・○ールド使いなのかもしれない。

「義和ちゃ~ん?よっスィ~?よしよし~?」

無反応の教室に、茨は続けて名前を呼ぶ。

取り敢えず何から突っ込めば良いのか判断しかねるのだが、順を追って横手に叩いて「なんでやねん!」をしよう。

まず、何故にクラスメイトとはいえ、そんな馴れ馴れしい渾名で呼べるのか。

ネーミングセンスもさながら、呼ばれた本人は目が点になる。

ラブレターの基本、黒板or掲示板への「磔曝しの刑」は、罪悪感が微塵も無い『子供達』によくある傾向だが、皆が揃った教室内、早速大声で暴露するとは、書いた本人に何の罪があるというのだろうか。

そして、告白した相手ではない、別人と来たもんだ。

それもトビッキリ不細工の。

義和だって、目が点になる。

他の生徒は、茨のインパクトに圧倒されたみたいだが。

「よしよしよし~?よしよしよしよし~?よしよしよしよしよし…」
「ちょちょ、ちょっとー!!」

ひたすら『よし』を繋げて呼び続ける茨に、堪らず義和は起立し、制止の声を上げた。
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