茨ちゃんは勘違い
黒酉の嫌味に対しても、逆らえない事は重々承知している百合絵は、引き攣り笑いで誤魔化す他にない。

黒酉の横には随分と自分の置かれた立場を弁えた茨が、小さくなって俯いていた。

校長直々に、どんな処分を下されたのかは知らないが、コッテリ搾られたのだろう。

顔のところどころに擦り傷と青タンが出来ているのは、多分黒酉の仕業だろうが。

本当なら良い気味だと笑うとこだが、今はそれどころじゃない。

百合絵は嫌な汗をかきながら、チッと舌打ちをした。

そんな百合絵の思いをさらに押し潰すかのように、黒酉はニヤリと笑い、こう言い放った。

「丁度良い。お前、城山と一緒に放課後残れ。話がある。」

百合絵は、一瞬にして幸福感に満ちた時間は終わりを告げ、再び悪夢が訪れる合図のような気がした。
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