戻れないはずだった。変えられないはずだった。
「だから…さ、もういいんだ」



儚いようで、哀しいようで、それでいて美しかった。

こんな顔を、させたくない。こんな顔は、させたくない。

大切な友達を、こんな風に苦しめたくない。




けど、何も出来ない私に腹が立った。





「………渚、」




地面を睨んだまま、私は渚を呼んだ。





「ん?どしたの麻帆」


「渚は、私が守るから。だから、無理、すんな」




泣きたい気持ちはあるが、きっと渚の方が泣きたいはずだ。

そう思い精一杯の笑顔を見せる。




「…ありがとう」




そういって渚が溢したのは、花が咲くような綺麗な笑顔だった。




「……暗い話は此処までにして!近づいてきてる楽しい楽しい文化祭の話しようよ」


「…そうだね」




渚はどこからか楽譜を出した。




「ここの音がさ、麻帆良くズレるんだよね」


「えっマジ?全然そんな自覚なかったわ…」


「私はそれに驚きだよ」


「えっ、じゃあここは───」








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私たちの学校の文化祭は、三日間に渡って行われる。

一日目は全校で歌唱大会的なもの。簡単に言うと各学年で課題曲と各クラスで選んだ曲の二曲を歌うのだ。


二日目は各部活の出し物。そして自由行動。

二日目が一番楽しそう。…何だかんだで自由行動が良い。


三日目は〝有志団体〟による演技。

有志団体の演技とは、個人が希望しそしてオーディションで受かった人が各々(おのおの)自分の個性を生かすのだ。

歌や歌やピアノや…あるときにはヲタ芸をやっている先輩もいたらしい。



ということで、私と渚は入学一年目にして有志団体に出ようとしているのだ。

ちなみに私が歌って渚がピアノを弾く。

二人で色々やりたい…と話していたのだが結局これが一番しっくりきたのでこうなったのだ。


私たちはたまに練習して、迫り来るオーディションに備えているのだ。



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