今宵、ロマンチスト達ここに集いて




「だってほら、自分で話したくせにあれなんだけど、常識では考えられないような話だったでしょう?時間を行き来するなんて。実際、他の人に同じ話をしたことはあるけど、みんな途中から全然信じてくれなかったんだもの。子供を失って、夫にまで先立たれた未亡人が何かおかしなことを言い出した、くらいにしか思われなかったのよ」

口をぷくっと突き出して、まるで拗ねるような態度の前崎さんを、私は可愛らしいなと思った。
前崎さんに対する私の印象は、一貫している。
少女のような人。そして、ホットミルクのようにやわらかく癒してくれる、優しい人。
そんな前崎さんだからこそ、私は話を聞きたいと思ったのだ。


「誰も信じてくれなかったんですか?」

それは気の毒に…という口調で同情を表した。

「そうなの!あといくらも生きられない人間の話なんだから、もっと真面目に聞いてほしいものだわ。まったく」

今度は腕組みまでして不服を訴えてくる。
もちろん冗談めかしてではあるが、彼女の悔しさみたいな感情がひと(さじ)ほどは見えてくる。
ただ、余命に関してそんな風にポップに訴えてこられると、私はなんとも言えなくなってしまうのだ。
するとそれに気付いたのか、前崎さんが「とにかく!」と、わざとらしい咳ばらいをした。


「ようやく岸里さんみたいに信じてくれる人に出会えて、よかったわ」











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