今宵、ロマンチスト達ここに集いて




『だって、わたしを助けてくれた人に、わたしの代わりにお礼を言うために探してくれたんでしょう?』

『ああ……そういうことか……』


ため息を含んだ呟きを吐き出した彬くんは、本当に疲れているように、項垂れた。
なんだか、全身から生気が吸いとられてしまったような、蒼白い横顔だ。


『……彬くん?』

『うん?』

『ひょっとして何かあったの?こんな時間まで……』

『いや、ちょっと、たまたま叔父に会って……』

『叔父さまって、あの(・・)?すごい、偶然だね』

『本当、すごい偶然だよな……』


空気に溶けるかのようなおぼつかない返事に、わたしはつい、訊いてしまう。


『……大丈夫?』

大丈夫?なんて訊かれても、大丈夫。としか答えようがないのに。
ほら、やっぱり彬くんは、顔を持ち上げて。


『……大丈夫。だって俺は、千代のお父さんとお母さんになったんだからな。あと、姉と兄と弟と妹だろ?それから、友達、親友、先輩、後輩、先生、あとは……ペット?』

『ペットって……』

思わず、時刻も忘れて声をあげて笑ってしまう。


『やっと笑った。これで、もし今度また千代がお父さんやお母さんに会いたくなったとしても、俺のことを思い出して笑ってくれるよな?』


そう言って、うっすらと微笑んだ彬くん。
その疲労感たぎる優しい顔は、なぜだかわたしの脳裏に焼き付いて離れなかった。


わたしの恩人について何かわかったことがあるのかとか、偶然出会ったという叔父さんのこととか、訊きたいことは色々あったけれど、そのどれもを口にすることさえ躊躇してしまうような、そんな、蒼白くて、でも優しい顔。



それは、何年経っても、今でも、はっきりと覚えているほどで―――――――











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