冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる～愛なき契約夫婦の艶美な一夜～

皆さんをお見送りしたところで最後に近寄ってきた夫婦がいた。

私を睨んできて、小さな声で
「こんなののどこがいいのかしら。あなたのことは許さないわよ。」
「お前のせいでうちが倒れたら許さないからな。」
と夫婦揃って悪態をついてきた。

どちら様かもわからない。

呆気に取られていると、神山さんが近づいてきた。

「脅迫ですか？」

「いえ、そんな…滅相もない。お祝いを申し上げただけですよ。」

「私にはそうは聞こえなかった。ご自身の身の振り方に気をつけた方がいい。」

「…」

夫婦はそそくさと逃げていった。

「玲奈さん、お疲れ様でした。なかなかの花嫁っぷりでしたよ。」

「あ、神山さん。お疲れ様です。ありがとうございます。」

「全く…油断も隙もない。あの夫婦、柳瀬夫妻には気をつけてください。」

「はい。」

神山さんはすぐにどこかに電話する。

『あ、オレ。今花嫁に柳瀬が接触したぞ。全くこんなところで…ほんと節操のないやつらだよ。優しい対応してやってるのに。このままじゃ、自分たちのせいで首を締めるかもな。あぁ…、わかった。それじゃ…。』

「米山さんに言っといたから。今日は式だからとりあえずみんなの手前、響とここに泊まって行って。必要なものは用意させるから、って言ってたぞ。」

「えぇ？！わ、わかりました。でも響さんはどちらに？」

「あぁ、両親のところに顔出してる。すぐに戻るはずだ。」

「私も行った方が良くないですか？」

「…行けるなら。もし、行ってくれるのなら助かる。」

「もちろんです。」

私は心のなかで「契約ですから」とつぶやいた。

神山さんにつれられ新郎の控室に向かう。
何やら大きな声で言い合うような声が聞こえてきた。
何を話してるのかわからないが和気藹々ではなさそうだ。