冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
響さんがお風呂から出たタイミングを見計らうかのように、朝食が運ばれてきた。

家ではこんなに朝から品数が並べられないし、食べられないけど旅行に行くと何故か食べられちゃうのよね。

響さんも完食していた。

そのあともなんとなくゆっくりと過ごし、お昼近くにチェックアウトした。

時間を急かされないなんて、VIPは違うのね…。
私の知ってる旅行って朝は食べたらすぐに支度しなきゃ、なのに。
卑屈になりそう…いや、こっちの方が普通じゃないのよ。私の生活の方が世の中の大多数の意見だわ。

私は旅館を出たあとどこに行くのかと思ったら大涌谷へ連れて行ってくれた。途中からロープウェイに乗り景色を楽しんだあと、到着した大涌谷で黒卵を食べた。
1個食べたら1年寿命が伸びるなんて言われている。
私はありがたく3年も寿命を伸ばしてもらった。

またロープウェイにのり、車で箱根神社へ向かった。
 
箱根有数のパワースポットだそうで意外にも響さんはこういうところが好きらしい。
武将好きというのもあるのかもしれないが…。

箱根神社は空気が澄んでいて、気持ちが落ち着く。パワースポットと言われるだけあるのかもしれない。力強い何かを感じる…気がする。
開運パワーがもらえると言われているので私はこれからの人生の開運をお願いした。
響さんもお参りしており、彼もパワーをいただいているようだった。

そのあとは芦ノ湖へ向かい、美味しいランチを食べ、途中でお土産を買って帰った。

私は千波にお菓子と石鹸を購入した。 
他にはあげる人もおらず、ぶらぶら見るだけ。
響さんも特にお土産を買うことはない。

美味しそうな蒲鉾とガトーショコラを自宅用に選んだ。

帰り道、少し混んでいたけれど2人の会話は途切れることなく特に負担に思うことはなかった。
いつまでも話していたいくらい楽しかった。
響さんのことがまた分かった気がした。

特に響さんの旅行記は楽しかった。
彼はバッグパッカーのような旅行に大学の頃ハマっていたらしい。
その頃だってお金に困らない生活ができたのでは?と思うけれど彼は普通の人と同じことがしたかった、と。

響さんは、
「自分の世界は狭くて、本当の世界を知らなくて、甘かったことに気がつきこれではいけないと思ったんだ。貧しい人がいるのはテレビの中だけでリアルじゃなかったし、色々な人がいるのも同じだった。世界に出てみると自分の景色は変わり、考え方も捉え方も人それぞれだった。」
と話す。

今しかできないからと大学を1年休み世界中を旅したと言い、
「俺は普通だと思っていたけど、実はとてもあまやかされて育ったんだと思った。お金をバイトで稼ぎ、それをもって世界へ出たんだ。高級なところになんて泊まれない。ユースホステルを泊まり歩いたよ。大きなリュック1つ担いで回ってたよ。世界遺産も見て回った。スマホ片手に調べ、自分の足でまわり、すごく楽しかった。親にはとてつもなく反対されたが押し切って行って良かったと思う。荷物を持って歩いていると疲れた顔をしてたのかチョコをくれるおばあちゃんがいたり、木陰で涼んでると近寄ってくる子供達がいてさ。外国人の俺が珍しいからか喋りかけてくるんだよ。遊んでいたら夕飯に誘われご馳走になったことも何度もあったな。そう思うと日本よりフレンドリーなんだな。俺は海外は怖さよりも楽しいとか面白いって記憶しかないよ。」

「凄いですね。私も海外に行きたいなぁ。私は卒業旅行でしか行ったことないですもん。」

「そのうち連れて行ってあげるよ。」

「じゃ、リュック買わないと…」

「そうだぞ!今日みたいな旅館じゃないぞ。2段ベッドだからな。」

「私が上にしますね!」

「ジャンケンだな。それにご飯なんてないから材料とかも背負って歩き回るんだ。少しずつ買って使い切らないと重くなるからな。」

「楽しそう。世界遺産も回れるならカンボジアやタイとか良さそう。ヨーロッパも行ってみたいけど…あー、旅行に行きたくなるなぁ。私、契約終わったらお金を貯めて旅行しながら回ろうかな。」

「……そうだな。そういうのもいいかもな…。玲奈の世界が広がると思うよ。」

「はい。考えてみます。」
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