雨の日のカフェで君に恋をする


外は降りしきる雨。窓ガラスに雨粒が滴る。

でも、こんな日に室内でまったりする時間も好きなので、雨の日も悪くないな。とさえ思えた。


読みかけの小説を鞄から取り出し、ページを開く。


物語に入り込んで読み耽っていた時、背後から小銭が床に散らばった音がした。


「ああっ!」


後ろを振り向くと、財布を持った男性がなんだか取り乱していた。
結構な広範囲で小銭をばら撒いてしまったようで、拾ってくれた方達に対してペコペコ頭を下げている。


「すいません、すいません」


なんとまあ、また派手な。
私の足元に転がってきた小銭を拾い上げ、落とし主に渡した。


「すみません、ありがとうございます!」


すると、笑顔でお礼の言葉が返ってきた。

笑うと三日月のように細くなる目が印象的で、一瞬ドキっとしてしまった。


なんだろう、この人。

彼の笑顔には、相手を一切嫌な気持ちにさせない特殊な能力がある気がする。

そんなことさえ思った。

< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop