遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
仕事の話が一通り終わると今度は趣味の話に移行した。

「趣味はパン作りですか。いいですね、手作りパン。得意なものとかありますか?」

「そうですね、得意というか食パン作りが一番好きです。パンを捏ねるときは無心になれるので、ある意味ストレス発散になるというか」

「なるほど、いい趣味ですね。羨ましいです。ストレス発散できるのはいいですね」

秀人の口調はおっとりしているし感情もこもっているのにその顔にあまり笑顔はない。だからといって特別冷たい印象を受けるわけではないのだが、秀人に対して和花は不思議な親近感を覚えた。

和花も誰かと話すとき、特に男性と話をするときは今の秀人と同じような感じになってしまう。何度もなぎさに指摘されていることはこういうことなのかもしれないと、ぼんやり感じ取った。

だからといって秀人にとってはこれが普通なのであろう。そのおっとりとした口調からして、大笑いをしたり騒いだり叫んだりなんてことは到底想像できない。
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