騎士のすれ違い求婚
✴︎


はやる気持ちで、城の門番に聞いたら、数時間前にティアは城を出たとのこと。

ジュシアノールは、自分の馬に乗り、ティアを追いかけた。

はじめ、王都にあるティアの父公爵のタウンハウスを訪ねたが、ティアは立ち寄っていないといわれた。

彼女は少し郊外の本邸に向かったのだ。
出遅れる事、数時間。
ジュシアノールの早駆けの馬でも、彼女の方が先に本邸に着いたであろう。

焦る心を落ち着かせながら、馬を走らせる。
少し不安を覚えながら。

なぜ。

逃げるように彼女は帰ってしまったのか。
まさか、と不安が心をよぎる。

(まさか、俺の求婚を受けたくないとか? )

昔、命を狙われ、ティアの家に匿われた。
その後、息子が早世した貧乏侯爵家の養子となり、名乗る爵位を得た。
そして、戦場に出た。

頭の中を、さまざまな思いが過ぎる。

そのどれにも、まず一番に浮かぶのはティアの顔だった。

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