託宣が下りました。

 苦しいときはヴァイス様を思いました。そして、アレス様やカイ様や、シェーラやアンナ様を思いました。

 わたくしに生きる意味を思い出させてくれる、大好きな人々を思いました。

 ――希望を捨てない。絶対に捨てない!

 そうして禊ぎの間にたどりついたわたくしは、罪悪感を抱きながらも鍵を破壊し、中に入ったのです――


 ……騎士がわたくしを助けてくれたことは、おぼろげに覚えています。

 聖なる水の中でのたうっていたわたくしを抱きしめた強い腕。そして、わたくしの唇をふさいだ熱い唇。

 わたくしの魔物は口から入ったのだと、考えた末にわたくしは察していました。騎士はそれを、そこから吸い出してくれたようです。

 そして――
 わたくしの代わりに魔物憑きになって――
 今、苦しんでいる、と。



「お願い……」

 とうとうわたくしはすすり泣きました。
 情けない話だと自分で思いながらも、涙が止まりませんでした。

 カイ様とアレス様が顔を見合わせました。

「……分かりました」

 やがてアレス様がため息をつき、「決して無理をしてはなりませんよ」とベッドのわたくしに手を差し伸べます。

「私につかまってください。一人で歩こうとしないように。いいですね?」

 わたくしは大人しくうなずき、彼の手を借りてベッドからおりると、肩をお借りしました。

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