かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「好き……かぁ」
 
 その言葉と同時に、葉月と呼ぶ遊佐部長の声を思い出す。
自分にもっと自信が持てたら、遊佐部長の言葉を素直に聞き入れられたのかな。
 
 四月三週目の木曜日。遊佐部長が出張に行ってから四日。夜も会食や接待で忙しいと言っていたから、思った通り連絡はない。
 
 そうは言っても、一度くらい電話をくれてもいいのに……。

 ホッとしたような寂しいような複雑な気持ちが湧き上がり、目の前に置いたスマホを手に取った。掛かってくるはずもないスマホをぼんやり見つめていると、突然手の中でぶるぶると震えだす。

「わあ!?」
 
 大きな声を出してしまい、コミュニケーションスペースにいるほかの人たちにぺこぺこと頭を下げた。
 
 まさかこのタイミングで掛かって来るなんて……。
 
 スマホの画面を見ると電話の相手は遊佐部長で、慌ててコミュニケーションスペースを出て人気のない廊下の隅に身を隠す。

「もしもし?」
『悪い。仕事中だったか?』
「い、いえ。少し仕事に煮詰まって、コミュニケーションスペースで休憩をしてました。すみません」


< 18 / 139 >

この作品をシェア

pagetop