かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「遊佐さんは、水族館に来るのはいつぶりですか?」
 
 水族館と言えば、家族で来るかデートの定番コース。きっと前に付き合っていた女性と行ったことがあるだろうと思って聞いたのに、返ってきた答えは……。

「覚えていないくらい前だな。記憶にある限り、大人になってからは一度も行っていない」
「そうなんですか?」
 
 てっきり一年前か二年前くらいだと思っていた私は拍子抜け。水族館がデートの定番コースだと思っていたけれど、そうじゃないのだろうか。
 
 彼氏がいたことがなかったのだからデートはしたことがないし、そういう情報を仕入れる雑誌なんかもあまり読んだことがない。
 
 今思えば、寂しいアオハルだったなと思いにふける。でも今はこうして遊佐さんの隣に、彼女としていられるのだから幸せだ。

「葉月は?」
「え、私ですか? 私は中学生くらいのとき、父と母と弟の四人で水族館に行ったのが最後だと思います」
「弟がいるのか?」
「はい。三歳年の違う、大学生の弟がいます」
「へえ。てっきり葉月は、ひとりっ子だと思ってた」
 
 そう言った遊佐さんは、クスクスと笑い出す。


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