かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「間に合わせます」
 
 それでも出来ませんとは言えず、顔の前でこぶしを握り笑って見せた。

「頼みます。俺もこっちの仕事が片付いたらそっちに行くから、無理だけはしないように」
「わかりました。でも大丈夫です。専務も兼任しているんですから、遊佐部長こそ無理はしないでください。では、失礼いたします」
 
 当日ドタキャンは、これで何度目だろう。また杏奈をガッカリせるのかと思うと心苦しいけれど、こればかりは仕事だからどうしようもない。
 
 埋め合わせは何にしようかと考えながら、専務室をあとにしようとしたそのとき。

「野中」
 
 遊佐部長に呼び止められて足を止めると、何ごとかと振り返る。プレジデントチェアから立ち上がった遊佐部長が私のほうへと歩いてくるのを見て、伝え忘れたことでもあったのだろうかと小首を傾げた。

「遊佐部長、どうされたんですか?」
 
 ミーティングの日にちでも違っていたのかとタブレットを持っていた左手を上げて、でもその手をやんわりと取られた。


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