公然の秘密
第4章
数日が経った。

「辞めるって?」

尾関は聞き返した。

彼が用意してくれた朝食を食べながら、柚愛は仕事を辞めることを伝えたのだ。

「まあ、あんなことをされた訳だからな…」
と、尾関は息を吐いた。

柚愛は彼の口から次の言葉が出てくるのを待った。

「いいんじゃないか?

柚愛が考えて決めたんだったら、俺は何も言わないよ。

仕事ならばまた探せばいいだけの話だし」

「…うん」

尾関の返事に柚愛は首を縦に振ってうなずいた。

「そんな顔をするなよ、俺まで悲しくなる」

彼にそう言われるまで、柚愛は自分がどんな顔をしていたのかわからなかった。

「何かあったら俺が守るから心配するな。

柚愛は柚愛のペースで生きていけばいいんだから」

「…ありがとう、麗一さん」

「うん、その顔だ」

柚愛の顔を見た尾関は微笑んだ。
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