お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
きっと美鈴にまた詰め寄ったのだろうと推測出来た。

出来れば、美鈴の方から話を切り出してくれたらと願っていた。

しかし、美鈴の口から十五年前の未遂事件の話は語られる事はなかった。

ある日、美鈴の妹の美香ちゃんが会社に俺を訪ねて来た。

「慶さん、ちょっと相談があって、時間ありますか」

「うん、これから昼飯食おうかと思っていたから、一緒にどお?」

「本当ですか、嬉しい」

その時、美鈴が俺の忘れ物を届ける為、会社に来ていたことなど想像も出来なかった。

社長室の前でおれと美香ちゃんの姿を見た瞬間、まるで美香ちゃんが美鈴が訪ねてくる事をわかっていたかのように、急に俺に抱きついて来た。

「慶さん、お願い、可愛い妹の寂しい気持ちをちょっとでいいから慰めて、好きな人に振られてしまったの」

美香ちゃんはそう言って、俺から離れようとはしなかった。

この時、まさか美鈴が見ていたなど思いもよらない事だった。

そして、この一連の行動は美香ちゃんの策略だったのだ。

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