喧嘩最強男子の溺愛
◎ 第十章 勉強合宿 -ライバル登場-

夏休みに入った7月、一泊二日の勉強合宿という勉強会がある。

場所は前に郁人が委員会で下見したホテル。

ホテルに24時間滞在し受験に向けた勉強をさせられるという、大学受験するつもりのない私にとっては苦痛以外の何物でもないイベント。

そんな勉強合宿は自分の弱点教科を中心に行うから事前に勉強したい教科を書いて提出しなければならず、ほぼ全部の教科が弱点の私は何を書いていいかすら分からない。

有希は数学と書いて提出したって。

私はどうしよう。逆にそこそこ得意な教科にしようかな。

そうじゃないと皆の足を引っ張りそうだしな。

その日の帰り、郁人にどの教科にしたのか聞いてみた。

「俺? 俺はなんでもできるんだけどさ。しいて言うなら化学かな」

「化学かぁ。私、化学なんて授業中寝てるしなぁ」

「あはは! じゃ、帆乃香も化学にしたら? 一緒の部屋で勉強できるよ」

「ごめん、それは無理。化学と数学と物理と古典と・・・色々無理」

「帆乃香さ、苦手教科あり過ぎだって。じゃ何にするの?」

「うーん、一番得意な英語かなぁ」

「苦手教科を選ぶんだぞ、知ってる?」

「いいの。私は得意な英語ですら他の人より劣ってるから。他の人から見れば英語が私の苦手教科だって思われるんじゃないかな」

はあ。自分で言ってて悲しくなってくる。

「じゃ、俺も英語にするかな」

「なんで? 苦手教科を選ぶんだよ、知ってる?」

さっき郁人に言われた言葉をそのまま返してみた。

「別の教科にしたら部屋が違うんだぞ。いいの?」

どうして郁人はそんな思わせぶりなことを言ってくるの?

時々、不意にドキっとさせられる。

「えっと、それは郁人が私と一緒に過ごしたいって言ってるの?」

「ちっ、違うよ。帆乃香の面倒を見てあげようと思っただけだろ。じゃいい。俺は化学にする」

あ・・・。拗ねた。

「ふふっ、郁人、ありがとう。でも、郁人の受けたい教科を選んでね」

そしてとうとう勉強合宿の日がやってきた。

朝、ホテルに到着すると、まず携帯を回収される。夜まで先生が預かる仕組み。

結局、私は英語、郁人は化学を選択して。

教科ごとに部屋が違うから郁人とは会えない。

なんだか寂しいな。こんなんだったら意地を張らないで郁人にも英語を選択してもらえば良かった。

私は英語のクラスでプリントに悪戦苦闘していた。

やっと休憩時間になり、ロビーに行けば他の教科組に会えるかなって思ったけど、休憩時間はそれぞれの授業の都合で変わるらしく、全く会えない。

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