やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

「飲み会行く人ー」

 一人ぎくりと身体が強張る中、女子は皆、はいっ、と可愛く挙手している。そんな姿を横目にそそくさと部屋の隅に寄って空気に馴染む。
 
 研修生の飲み会は、研修終了時だけ行う慣わしがある。なので今回が最初で最後。なんとかやり過ごしたい私に、爽やかな河村君の声が刺さる。
 
「席は彼女の隣がいいです。仕事が忙しくてあんまり会えないんで」

 河村君は社会人になって、人懐こい笑顔から爽やかな笑顔に昇華したのだな。
 そんなどっちも素敵な笑顔に、ぎゃーっていう悲鳴が聞こえた気がする。きゃーかもしれないけど……

 困った風に笑う河村君に頬を緩ませた美夏が、「じゃあ雪子も参加ね」と出席簿に丸を付けてくれた。なんか皆、彼の掌で転がされていないかなっ?

 とは言え、この状況で断れる胆力は私には無い、ので……せめて、

 絶対お酒は飲まないぞ。

 固く誓う私なのでした。
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