ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第20話 心火の聖母】
しんとした静けさだけが支配する中、王子に連れられて王城の奥深くを進む。幾度も廊下の角を曲がり、もはやどの道をたどって来たのかもわからない。
注意しないと気付かない程度に緩やかな傾斜が続き、王城の地下へと向かっているであろうことは、リーゼロッテにも理解できた。
(あそこへ向かっているのかしら……?)
まっすぐ伸びる廊下の先に、そびえ立つような二枚扉が見えてくる。近づくにつれて、それが思う以上に大きいものだと分かった。
その目の前までたどり着くと、扉に施された龍のレリーフにむけて、ハインリヒ王子は両手をかざした。龍が紫を帯びたかと思うと、その重厚な扉がひとりでに開いていく。きしむような音がその場に重く響いた。
開ききった扉を躊躇なくくぐると、王子はついてくるようにと視線で促してくる。場の雰囲気に飲まれながらも、リーゼロッテはそれに従い、薄暗い扉の奥へと足を踏み入れた。
一歩踏み込んだ瞬間、押さえつけられるような圧が全身を覆う。じんとしびれるようなその感覚は、神聖でいて、畏怖を感じさせるものだった。
続いてカイが入った矢先に、再び扉が閉じていく。きしむ音に振り返ったリーゼロッテは、閉まりゆくその様を不安げに見やった。
「リーゼロッテ嬢、奥へ」
声をかけられ、部屋の中へと視線を戻す。王子が立つその辺りだけが、うすぼんやりとした明かりで照らされていた。奥までは見渡すことはできないが、ここはやたらと天井が高く、狭く細長い部屋のようだ。
注意しないと気付かない程度に緩やかな傾斜が続き、王城の地下へと向かっているであろうことは、リーゼロッテにも理解できた。
(あそこへ向かっているのかしら……?)
まっすぐ伸びる廊下の先に、そびえ立つような二枚扉が見えてくる。近づくにつれて、それが思う以上に大きいものだと分かった。
その目の前までたどり着くと、扉に施された龍のレリーフにむけて、ハインリヒ王子は両手をかざした。龍が紫を帯びたかと思うと、その重厚な扉がひとりでに開いていく。きしむような音がその場に重く響いた。
開ききった扉を躊躇なくくぐると、王子はついてくるようにと視線で促してくる。場の雰囲気に飲まれながらも、リーゼロッテはそれに従い、薄暗い扉の奥へと足を踏み入れた。
一歩踏み込んだ瞬間、押さえつけられるような圧が全身を覆う。じんとしびれるようなその感覚は、神聖でいて、畏怖を感じさせるものだった。
続いてカイが入った矢先に、再び扉が閉じていく。きしむ音に振り返ったリーゼロッテは、閉まりゆくその様を不安げに見やった。
「リーゼロッテ嬢、奥へ」
声をかけられ、部屋の中へと視線を戻す。王子が立つその辺りだけが、うすぼんやりとした明かりで照らされていた。奥までは見渡すことはできないが、ここはやたらと天井が高く、狭く細長い部屋のようだ。