ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第27話 陰謀の夜会 -後編-】
禍々しい波動を発しながら、ミヒャエルは瞳を閉じたまま胡坐をかいていた。
「ふはは、見える、見えるぞ……!」
異形に憑かれ錯乱する者、混乱で逃げ惑う貴族たち。夜会の会場のみならず、王城の様子が隅々まで脳裏に浮かぶ。王妃は王と共に我先にと逃げたようだ。だが今はそれでいい。
「王妃には傷ひとつつけるな。狙うは王太子だ」
ミヒャエルの指にはまる紅玉の指輪が怪し気な輝きを放つ。これは女神から賜った寵のしるし――王への約束の証だ。
配下の貴族たちが剣を振り上げ王子へと襲いかかる。王城騎士に阻まれ、傷つけられても怯むことはない。貴族たちはただの捨て駒だ。屍になり果てようとも、異形たちが傀儡としてその器を操るだけだ。
「王太子だ! 王太子の首を女神に差し出すのだっ」
高らかに声を張り上げると、貴族たちの威力も増していく。
「素晴らしい…これが女神が与えたもうた力か……!」
小競り合いが続く中、ハインリヒ王子が廊下へと逃れていった。
「どこへ逃げても無駄なこと。さあ、追え! 王太子を追い詰めろ!」
女神の力が王城に広がっていく様が手に取るように分かる。感化されたように気を荒げる異形たち。それに飲まれた心弱き人間が、さらに王城を混乱へと導いている。
勝負は王兄バルバナスの到着までにどれだけ王城内を掌握できるかだ。奴の率いる特務隊の能力は厄介だ。王太子の配下にも力ある者はいるにはいるが、その大半は貴族の出だ。夜会に浮かれて今頃は酒にでも酔っていることだろう。
「最低でもハインリヒ王子の命を獲らねばならん」
王子の行く先を傀儡貴族に指示していく。近衛の騎士と分断させて、王子ひとりを追い詰める手はずだ。
「もうすぐ……もうすぐだ」
女神の導きのまま、自分はすべてを手に入れる。ミヒャエルは閉じた瞳の奥に、その未来を確信した。
「ふはは、見える、見えるぞ……!」
異形に憑かれ錯乱する者、混乱で逃げ惑う貴族たち。夜会の会場のみならず、王城の様子が隅々まで脳裏に浮かぶ。王妃は王と共に我先にと逃げたようだ。だが今はそれでいい。
「王妃には傷ひとつつけるな。狙うは王太子だ」
ミヒャエルの指にはまる紅玉の指輪が怪し気な輝きを放つ。これは女神から賜った寵のしるし――王への約束の証だ。
配下の貴族たちが剣を振り上げ王子へと襲いかかる。王城騎士に阻まれ、傷つけられても怯むことはない。貴族たちはただの捨て駒だ。屍になり果てようとも、異形たちが傀儡としてその器を操るだけだ。
「王太子だ! 王太子の首を女神に差し出すのだっ」
高らかに声を張り上げると、貴族たちの威力も増していく。
「素晴らしい…これが女神が与えたもうた力か……!」
小競り合いが続く中、ハインリヒ王子が廊下へと逃れていった。
「どこへ逃げても無駄なこと。さあ、追え! 王太子を追い詰めろ!」
女神の力が王城に広がっていく様が手に取るように分かる。感化されたように気を荒げる異形たち。それに飲まれた心弱き人間が、さらに王城を混乱へと導いている。
勝負は王兄バルバナスの到着までにどれだけ王城内を掌握できるかだ。奴の率いる特務隊の能力は厄介だ。王太子の配下にも力ある者はいるにはいるが、その大半は貴族の出だ。夜会に浮かれて今頃は酒にでも酔っていることだろう。
「最低でもハインリヒ王子の命を獲らねばならん」
王子の行く先を傀儡貴族に指示していく。近衛の騎士と分断させて、王子ひとりを追い詰める手はずだ。
「もうすぐ……もうすぐだ」
女神の導きのまま、自分はすべてを手に入れる。ミヒャエルは閉じた瞳の奥に、その未来を確信した。