ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第4話 遠き笛の音】

 細く、刺さりそうな眉月(まゆづき)が浮かぶ空に、笛の()を響かせる。
 ほんのひと時だとしても、彼女のこころが安らぐように

 風も、虫たちも
 今だけは邪魔をしてくれるな

 そう願いながら石積みの高い(へい)を見上げ、その夜、ミヒャエルは笛を奏で続けた――



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