ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 カーン、カーン、カーン……

 (とむら)いの(かね)にはっと意識が浮上した。横たわっていた寝台を降り、窓へと駆け寄った。風のない鈍色(にびいろ)の空に、白い煙が一筋、高く立ち昇っている。

「お嬢様……」

 後ろから声をかけられ、振り向くと黒いドレスを着たエラが立っていた。

「エラ……クリスティーナ様は……」
「今、本神殿で葬儀が――」

 瞳を伏せたエラに、リーゼロッテは空へと視線を戻す。


「クリス……ティーナ様……」

 再び弔いの鐘が、窓の外、静かに響き渡った。





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